不織布とは?メリット・デメリットや素材の特徴を徹底解説!
2024年08月22日不織布は使い捨てマスクの普及により、近年あちこちで目にするようになりました。不織布とは、繊維を織らずに作った布状の素材で、身の回りのさまざまなものに活用されています。そんな不織布ですが、実際どのような場面で使うのでしょうか。
そこでこの記事では、不織布の基本情報や素材、メリットやデメリットについて詳しく解説します。不織布を利用しようと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
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不織布とは?
不織布とは、名前のとおり繊維を織らずに作った布状のもののことです。英語では「non-woven fabric」と書き、「織られていない布」と直訳されます。普通の布は、繊維を織ったり編んだりして作られますが、不織布は織ったり編んだりせずに作られます。
不織布の主な作り方は、以下のとおりです。
- 繊維を接着樹脂で科学的に結合させる
- 繊維を機械的に絡ませる
- 圧力をかけた水流で繊維を絡ませる
- 繊維を熱融着繊維で結合させる
使用する素材や製造方法で風合いや強度が変化するため、多方面で利用されています。
不織布の歴史
不織布の歴史は、1920年代にドイツのフェルト業者が、繊維を接着剤で固めたのが始まりだという説があります。フェルトも不織布の1つです。フェルトは、チベットの遊牧民が羊の毛がもつれていることに着想し人工的に作ったものだとされています。
日本では、1950年代半ばごろに不織布の製造が本格化しました。1954年に「乾式不織布」を製造する機械がアメリカから持ち込まれたことがきっかけで、国内に広く行き渡ったといわれています。
一般的な布はいつから使われ始めたかわからないほど歴史が古く、日本では少なくとも縄文時代には麻を織った布があったとされています。一方、不織布の歴史は浅く日本では50年ほどしかありません。
不織布の歴史はまだ浅いですが、今後も新しい技術によって可能性を広げていくでしょう。
不織布の素材とその特徴
不織布の素材は主に天然素材と化学繊維の2つに分けられます。不織布は内部にたくさんの穴がある「ポーラス構造」になっているため、以下のような特徴があります。
- 通気性に優れている
- ろ過性に優れている
- 保湿性に優れている
- 吸水性に優れている
素材や製造方法を組み合わせることで、紙状やレザー状のように形状を変えたり、拭き取り性や柔軟性などの機能を高めたりできます。
ここでは、天然素材と化学繊維に分けて、それぞれの特徴について詳しく解説します。
天然素材
天然素材とは、名前のとおり自然界にある繊維を使った素材のことです。天然素材も大きく分けると、羊毛や絹などの「動物繊維」と、綿や麻などの「植物繊維」の2つに分類されます。
天然素材は、肌に優しい、吸湿性や保温性に優れている、丈夫で長持ちしやすいなどの特徴があります。ここからは、どのような天然素材があるのかみていきましょう。
綿|吸水性に優れている
綿は「コットン」とも呼ばれ、植物「ワタ」の種子につく綿花で作られる素材です。
綿は吸水性が高く、肌ざわりが柔らかいのが特徴です。また、染色しやすいためカラーバリエーションが豊富なのも特徴の1つです。
パルプ|しなやかさがある
パルプは木材や草などから抽出した繊維のことで、しなやかさが特徴です。
ダンボールや新聞、ティッシュなど幅広い紙製品に使われています。パルプは製造方法によって「化学パルプ」「機械パルプ」「古紙パルプ」の3つに分類されます。
羊毛|保温性と吸放湿性に優れている
羊毛は「ウール」とも呼ばれ、羊毛を加工して作られる素材です。保温性と吸放湿性に優れているのが特徴で、特に冬に重宝されています。
また、水をはじいて汚れにくい特徴もあるため、スーツや学生服などにも幅広く使用されています。
竹|耐久性に優れている
竹は、カゴや定規などの道具として、日本で古くから親しまれている素材です。
耐久性に優れており、抗菌性や消臭性もあるのが特徴です。また、成長スピードが速いため、潤沢に供給できる資源として近年注目されています。
麻|吸湿性や速乾性に優れている
麻は、植物の茎の繊維で作られる素材で、「リネン」や「ジュート」「ヘンプ」などの種類があります。
さらっとした肌ざわりで、吸湿性・速乾性・保温性に優れているのが特徴です。天然素材のなかで「最も丈夫」といわれており、こまめに手入れすると長持ちします。
鉱物繊維|耐火性に優れている
鉱物繊維は、岩石や鉱物などから抽出される素材です。代表的なものとして「石英繊維」や「岩綿(ミネラルウール)」が挙げられます。耐火性が高い特徴があり、断熱材や耐火剤として産業用途で使用されることが多いです。
絹|滑らかな肌ざわりで、上品な光沢感がある
絹は、蚕の繭から取れる素材です。「シルク」とも呼ばれており、高級素材として知られています。
天然繊維のなかで最も細く、上品な光沢感となめらかな肌ざわりが特徴です。さらに、保温性や保湿性にも優れており、1年を通して使用できます。
化学繊維
化学繊維とは人工的に作られた素材のことです。化学繊維は大きく分けると、石油系が原料の「合成繊維」と天然の原料を精製して作られた「再生繊維」の2つに分類されます。
化学繊維は、シワになりにくい、洗濯や手入れがしやすい、天然素材と比べると安価などの特徴があります。ここからは、代表的な化学繊維についてみていきましょう。
ポリエステル(PET)|乾きが速く縮みが少ない
ポリエステル(PET)は、石油系が原料の合成繊維の1つです。とても強い繊維で、水に濡れたり摩擦があったりしても強度が変わらない特徴があります。
さらに、吸湿性が少ないため乾きが速く、縮みも少ないという特徴もあります。
ポリプロピレン(PP)|丈夫で汚れにくい
ポリプロピレンは、石油や石炭、天然ガスなどを原料に作られる素材です。
合成繊維のなかで最も軽く吸湿性や吸水性がまったくないため、水に浮くという特徴があります。丈夫で汚れにくいのも特徴の1つです。
ポリエチレン(PE)|防水性や耐薬品性に優れている
ポリエチレンは、石油や石炭、天然ガスなどを原料に作られる素材です。
ポリプロピレンと同じように、軽くて防水性に優れた特徴があります。また、耐薬品性にも優れており、アルコールやクエン酸、灯油などの日用品の保管に活用されます。
レーヨン|木材パルプが原料で発色が良い
レーヨンは木材パルプが原料の素材です。独特の光沢があり、発色が良いという特徴があります。
また、日本で1番早く作られた化学繊維ともいわれています。
ナイロン|強度が高くシワになりにくい
ナイロンは強度が高く、水をあまり吸わないという特徴があります。シワになりにくく、型崩れが少ないうえに発色に優れているためブラウスやニットシャツなど衣類に使われている場合が多いです。
アクリル繊維|保温性に優れている
アクリル繊維は、ウールに代わる素材として開発された合成繊維です。主に、ウールと一緒に混ぜ合わせて糸が作られます。
保温性に優れ、ニットや毛布、フェイクファーなどの冬物衣類や生活用品によく使われています。
アラミド繊維|耐熱性や難燃性に優れている
アラミド繊維は、ナイロンと似ている化学繊維です。耐熱性や難燃性、耐薬品性に優れているという特徴があります。
また、強度と軽さも特徴の1つです。身近なものだと、スマートフォンケースや、自転車のタイヤなどに使用されています。
ビニロン|耐候性や耐薬品性に優れている
ビニロンは石油や石炭、天然ガスなどを原料に作られる素材です。繊維強度が高く、耐候性や耐薬品性に優れているなどの特徴があります。
そのため、セメント補強やプラスチック補強、農業用ネットや魚網など工業や産業の分野で特に広く使われています。
その他の繊維
天然素材や化学繊維のほかに、「ガラス繊維」もあります。
ガラス繊維とは、文字どおりガラスでできた素材のことで、ガラスを溶融して細い糸状や綿状に加工するため「人工繊維」といわれています。ガラスの耐熱性や不燃性、耐久性と繊維の柔軟性の両方を兼ね備えており、近年注目されている繊維です。
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不織布の使用例
不織布は使用する素材や製造方法で風合いや強度や特徴が変化するため、日用品だけでなく幅広い分野で使用されています。
ここでは、代表的な不織布の使用例について、以下の6つを紹介します。
- 衣料品
- 生活用品
- 医療用品
- 衛生用品
- 建築・土木用品
- その他
それぞれ詳しく解説します。
衣料品
不織布は低コストかつ加工性にも優れているため、衣類の生地として使われています。衣類の骨格部分にあたる芯地や中綿など、見えない部分にも多く使われている素材です。
衣料品としての不織布の使用例は、以下のとおりです。
- 芯地や中綿
- ブラジャーのパッド
- ワッペン
- 帽子
- スリッパ
- カバン
生活用品
不織布は、多くの生活用品に使われています。
一般的に「不織布」と聞くと、布製品を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、食品を扱う製品にも利用されています。
また、不織布は紙よりも強度に優れていてリユース性も高いため、手提げ袋やギフトラッピングなどとしても人気です。
生活用品としての不織布の使用例は以下のとおりです。
- ふとん
- トートバッグ
- ショッピングバッグ
- スポンジ
- クッキングペーパー
- コーヒーフィルター
- 水切りシート
医療用品
不織布は、衛生面を重視する医療現場でも広く利用されています。特に不織布の安価で大量生産しやすいという特徴を生かし、多くの使い捨て用品に不織布が使用されています。
医療用品としての不織布の使用例は以下のとおりです。
- 手術着
- マスク
- ギプス材
- 抗菌マット
- ガーゼキャップ
- 医療用パッド
衛生用品
不織布には吸液性や通気性が高く、安価で大量生産しやすいという特徴があるため、衛生用品の材料としても幅広く使用されています。
衛生用品としての不織布の使用例は、以下のとおりです。
- 紙おむつ
- 絆創膏
- 生理用品
- コットン
- ウエットティッシュ
建築・土木用品
不織布は使用する素材や製造方法を変えると、強度や特徴が変化するという特徴があります。その特徴を利用して、建築・土木用品で使用されています。
建築・土木用品としての不織布の使用例は、以下のとおりです。
- 養生シート
- 結露吸収シート
- 壁装材
- 防音材
- 安全靴
- 防草シート
その他
上記で紹介した以外にも、不織布はゴルフクラブのヘッドカバーなどのスポーツ用品や、フロアマットなどのカー用品にも使われています。また、枕カバーや布団の中綿などの寝具類、カーペットや障子紙、畳材や壁紙などのインテリア関係に使用される場合もあります。
不織布は幅広い分野で使用されているため、日常生活において欠かせない素材です。
包装に不織布を利用するメリット
包装に不織布を使用するメリットは主に以下の4つです。
- 安価で大量生産が可能
- 軽くて耐久性が良い
- 形状が自由自在
- ほつれる心配がない
それぞれのメリットについて、他の包装資材と比較しながら解説します。
安価で大量生産が可能
不織布は、繊維をそのまま化学的に結合させて作るため、安価で大量生産できます。
織物や編み物は、糸の紡績や製織、仕上げなど複数の工程が必要です。一方、不織布は製造過程が簡素化されており、1つの工程で作成できるため手間がかかりません。
工程が少ない分、人件費や使用する機械などが削減できるため、低コストになるという仕組みです。
軽くて耐久性が良い
包装に紙を使用した場合、折り目がついたり、破れたりする可能性があります。また、雨などに濡れてしまうともろくなり、ボロボロになることも考えられます。
一方、不織布はテープで仮留めしたり折ったりしても痕が残らず、きれいに包装可能です。紙よりも耐水性にも優れているため、多少の水濡れであれば問題ありません。
形状が自由自在
不織布は加工しやすく、形状を自由に変更できます。製造方法を変更することで厚みや密度も調整できるため、イメージに合う不織布を生産可能です。また、色合いも自由に選べます。
手触りや風合い、強度や色合いを自由に変えられるので理想の包装材に出会えるでしょう。また、ふわっと包んだり、キュッと結んだりできるためアレンジの幅も広いです。
ほつれる心配がない
不織布は普通の布と違って繊維を織ったり編んだりせず、繊維を絡めたり化学的に結合させたりして作られます。織物や編み物を切るとどうしても繊維がほどけてしまうため、ほつれてしまいます。
一方、不織布は繊維を固めて作られているためどこで切ってもほつれる心配がありません。包装したい物の大きさに合わせて、自由にサイズ調整が可能なのはメリットといえるでしょう。
包装に不織布を利用するデメリット
包装に不織布を利用するメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。
- 素材によっては劣化しやすい
- 繰り返しの利用に向いていない
- 伸縮性があまりない
それぞれのデメリットについて詳しく解説します。
素材によっては劣化しやすい
不織布に使用する素材のなかには、劣化しやすいものもあります。たとえば、天然繊維やポリプロピレン、ポリエチレンなどを使用している不織布は紫外線に弱いため、直射日光が当たる場所で使用すると劣化します。
一方、ポリエステルを素材とした不織布は、紫外線に強いうえに耐熱性にも優れているため、耐久性が高いです。使用用途や使用場所によって素材を選ぶと良いでしょう。
繰り返しの利用に向いていない
不織布は、織物や編み物と比較すると耐久性が低いため、何度も繰り返し使うのには不向きです。数回使用可能な場合が多いですが、布製品に比べて強度は劣ります。
そのため、長期間繰り返して不織布を使用したい場合は、耐久性や強度を高めると良いでしょう。
伸縮性があまりない
不織布は伸縮性があまりないものが多いため、伸縮性を求める場合には注意が必要です。
近年では、赤ちゃん用のパンツ型紙おむつに伸縮性の高い不織布が使用されています。これは、不織布をより柔らかくした上に、不織布自体を伸び縮みさせる特殊紡糸技術が適用されたものです。
包装資材に伸縮性が必要な場合は、他の資材も検討しましょう。
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まとめ
この記事では、不織布のメリットやデメリット、素材による違いについて解説しました。
不織布は、繊維を織らずに作った布状の製品です。繊維を化学的に結合させるため、織ったり編んだりする工程がなく、安価に大量生産が可能です。
また、軽くて耐久性がある、裁断してもほつれる心配がないなどのメリットもあります。
この記事を参考に、ニーズに合わせて適切な素材で、不織布の利用を検討しましょう。
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